
今回は、2025年7月13日、高校野球沖縄県大会決勝 沖縄尚学vsエナジックスポーツ戦の4回裏の事象を取り上げます。
一塁手の捕球が際どい判定となったことに加え、結果として沖縄尚学の逆転につながるプレイになったため、様々な言及があるようです。
今回はこの事象について解説します。
どんなプレイ?
2025年7月13日、高校野球沖縄県大会決勝 沖縄尚学vsエナジックスポーツ戦の4回裏、2死一・二塁です。
打球はショートゴロ。バウンド送球になりました。

一塁手は体で送球を取りに行きました。送球が間に合ったかに見えましたが…

一塁塁審の判定はセーフでした。
X上でのこのプレイに対する反応を見ると、
「1塁審は何をもってセーフってジャッジしたんだろう。完全捕球じゃないと見たのかベース踏んでないように見えたのか」
「これでエナジック負けたら誤審のせいだよ 沖縄尚学はなんも悪くない」
「前からの映像ないから身体で取ってたらベース踏んでてもセーフやな。映像ないから誤審とは一概に言えないか」
などの投稿が見られます。
ポイントは一塁手の捕球がどうだったか
「完全捕球」とは?
指摘のとおり、このプレイのポイントになるのは一塁手が「完全捕球」していたかどうかです。
公認野球規則では、定義15に CATCH「キャッチ」(捕球)の定義が示されています。
定義15 CATCH「キャッチ」(捕球)
野手が、インフライトの打球、投球または送球を、手またはグラブでしっかりと受け止め、かつそれを確実につかむ行為であって、帽子、プロテクター、あるいはユニフォームのポケットまたは他の部分で受け止めた場合は、捕球とはならない。
また、ボールに触れると同時に、あるいはその直後に、他のプレーヤーや壁と衝突したり、倒れた結果、落球した場合は〝捕球〟ではない。
野手が飛球に触れ、そのボールが攻撃側チームのメンバーまたは審判員に当たった後に、いずれの野手がこれを捕らえても〝捕球〟とはならない。
野手がボールを受け止めた後、これに続く送球動作に移ってからボールを落とした場合は〝捕球〟と判断される。
要するに、野手がボールを手にした後、ボールを確実につかみ、かつ意識してボールを手放したことが明らかであれば、これを落とした場合でも〝捕球〟と判定される。
また、規則5.09(a)(10)には、【注】で次のような記述があります。
公認野球規則5.09(a)(10)【注】
触球するに際しては、まずボールを保持して触れることが必要なことはもちろん、触球後においても確実にボールを保持していなければならない。
また、野手がボールを手にしていても、そのボールをグラブの中でジャッグルしたり、両腕と胸とでボールを抱き止めたりしている間は、確実に捕らえたとはいえないから、たとえ打者が一塁に触れる前に野手が塁に触れながらボールを手にしていても、確捕したのが打者が一塁に触れた後であればその打者はアウトにならない。
このことから、一塁手(または、一塁にカバーに入った野手)は、ボールを手またはグラブで確捕することが求められています。
一塁塁審はどう見たのか?
残念ながら、中継映像には一塁手のキャッチングがどうであったかを確認できる三塁方向からの映像がありませんでした。しかし、このプレイを判定した一塁塁審のジェスチャーをよく見ると、一塁塁審はこのプレイをどう見たのかがわかります。


セーフを示す、両腕を横に広げるジェスチャーのあと、両腕を使って地面方向を指すジェスチャーをしています。
これを読み解くと、
「ボールを落としている」
あるいはもう少し広く解釈すると
「ボールを掴めていない」
と示しているようにうかがえます。
ボールを捕球できていないことを示すジェスチャー
セーフ、ドロップ・ザ・ボール
タイミングはアウトだが、野手がボールを落としたためセーフだと示すときは、セーフの宣告をした後、「ドロップ・ザ・ボール」と言って右手で地面(または地面に転がっているボール)を指差します。

セーフ、ジャッグル・ザ・ボール
一方、アウトのタイミングで、野手が確実に捕球する前に走者が塁に到達したときは、セーフの宣告をした後、「ジャッグル・ザ・ボール」と言ってお手玉をするような動作をすることで、まだボールを掴むことが出来ていないことを示します。

このように、タイミングはアウトだが完全捕球出来ていないためにセーフと宣告するとき、審判員がその理由を示す専用のジェスチャーとコールがあります。
今回の事象をまとめると…
一塁塁審のジェスチャーは、両手を使って「ドロップ・ザ・ボール」を示しているように見えますが、ボールが一塁手の手から地面に落ちたようには見えませんでした。
しかし、このシチュエーションでセーフの宣告のあとに追加のジェスチャーをしていたことから、「完全捕球とはみなせなかった」という判断と読み取って間違いないでしょう。
完全捕球とは「手またはミットでボールを確実につかむ」ことなので、例えば体と腕の間にボールを抱えるような状況だった場合は、完全捕球とはみなせません。そして、打者走者が一塁に到達するまでに塁に触れている野手が完全捕球できていなければ、一塁はセーフとなります。
少なくとも一塁塁審は、「完全捕球できていない」という根拠をもって一塁セーフと判定していることが明確にわかるので、この判定は尊重できるものです。私は、このプレイがアウトであるという根拠を中継映像から見出すことができないので、もしリプレイ検証する立場にあるならば「Stands - 判定維持」と判断します。

この判定を「大誤審」と主張する動画をいくつか確認していますが、私が閲覧した限りでは、動画投稿者の個人的な思いのみで主張しているものばかりで、「大誤審」とする根拠が示されている動画は見当たりませんでした。
批判自体は議論する上で大切なことであり、誤審であると確信が持てる何かがあるならば、ぜひ見てみたいのでお知らせください。しかし、根拠なく自分の思い(思い込み)を主張し「大誤審」などと発言することは、一塁塁審への誹謗中傷に当たるので、避けるべきだと考えます。