numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

ライン際の大飛球に外野手がダイブ!判定はフェアかファウルか

今回は、2025年8月19日、高校野球第13日第3試合 準々決勝 県岐阜商vs横浜戦の延長10回裏の事象を取り上げます。

ライトライン際の大飛球に外野手がダイブしましたが捕球できず、打球が地面に落ちたところで判定はファウル!しかし、かなり際どい所に落下したことからフェアかファウルかだけでも大きく話題となりました。この事象に関連して、SNS上で話題になったルールに関係する内容を解説していきます。

フェアかファウルかはどうやって判定する?

この打球、一塁塁審の判定は「ファウル」でした。

当ブログには、過去にも打球がフェアかファウルかで難しい判定となった事象について解説をしたことがあり、その時に「フェアボール」の定義を紹介しています。

num-11235.hateblo.jp

今回は判定が「ファウル」だったので、公認野球規則の「ファウルボール」の定義を紹介しましょう。

公認野球規則 定義32 FOUL BALL「ファウルボール」
──打者が正確に打ったボールで、次に該当するものをいう。
(a) 本塁一塁間または本塁三塁間のファウル地域に止まったもの。
(b) 一塁または三塁を、バウンドしながら外野の方へ超えて行く場合に、ファウル地域に触れながら通過するか、あるいはファウル地域上の空間を通過したもの。
(c) 一塁または三塁を超えたファウル地域内に、最初に落下したもの。
(d) ファウル地域内またはその上方空間で、審判員またはプレーヤーの身体、あるいは、地面以外のものに触れたもの。

 ファウル飛球は、ボールとファウルライン(ファウルポールを含む)との、相互の位置によって判定しなければならない。 野手がボールに触れたときに、フェア地域にいたか、ファウル地域にいたかによって判定してはならない。
【原注】 野手に触れない打球が、投手板に当たり、リバウンドして本塁一塁間または本塁三塁間のファウル地域に出て止まった場合には、ファウルボールである。 

【注1】 打者の所持するバットに、打球(バントを含む)がファウル地域で触れたときは(もちろん故意ではなく)、ファウルボールである。
 また、打者が打ったり、バントしたボールが反転して、まだバッタースボックス内にいる打者の身体およびその所持するバットに触れたときも、打球がバットまたは身体と接触した位置に関係なく、ファウルボールである。

【注2】 打球が地面以外のもの、すなわちバックネットやフェンスはもちろん、打者が捨てたバット、捕手がはずしたマスク、地上に置いてある審判員のほうきなどに、ファウル地域でいったん触れれば、その後転じてフェア地域内に止まってもファウルボールである。

 

一塁や三塁を超えて外野に飛んだ打球は、一般的には打球が最初に地面に落ちたときの位置でフェアかファウルかが確定します。

上の図のとおり、打球が一塁または三塁を超えて最初に落下した地点がファウル地域内の場合は、ファウルボールです。

ファウルライン上はフェアグラウンドであり、ボールがわずかでもファウルラインにかかっていれば、フェアと判断します。

実際の打球はどこに落ちたか?

Xに投稿された本件に関連する動画や静止画は、ほとんどがNHKの中継映像の引用で、一塁側のスタンドからの映像でした。

NHKの中継映像を根拠に、白い粉が飛んでいるので打球が落ちた位置はファウルライン上、だから「フェア」だと主張する投稿が目立ちます。

投稿の中には、ボールが落ちたときの跡の位置をはっきり確認できる静止画があります。

ラインぎりぎりの位置に落ちているように見えます。しかし、NHKのこの映像は残念ながらかなり斜めから撮っているため、どこに落ちたのかはこれでははっきりしません。

画像

さらに探してみると、この瞬間を外野スタンド側から撮っていた映像を1件だけ見つけました。これを見ることで、どこに落ちたかが分かります。

投稿された本人はフェアだと確信しているようですが、一塁塁審の木村さんは外野手がダイブする前に一塁線上に立っていて、この映像を撮っている角度よりもはるかに良い位置取りで判定していることが分かります。これだけよい位置取りをしているので、私は木村審判員の判定には説得力があると思います。

さて、この映像をコマ送りして拡大して確認してみると、NHKの中継映像にも映っていた、打球が地面に落ちた跡を確認できます。これを見ると明らかに落ちた位置はファウルグラウンドです。

外野手が触っている?!

打球がグラブに当たっているから「フェア」という主張も目にしました。

あらためてNHKの中継映像を見てみると、打球がグラブ付近を通過した前後で、軌道がこのくらい変化しているように感じます。

(矢印は軌道変化のイメージです)

野手が打球に触れていたのだとすると、フェアかファウルかを判定する瞬間は打球がグラウンドに落ちたときではなく、先ほど紹介した定義32(d)のとおり、触れた瞬間の打球の位置で決定することになります。

(d) ファウル地域内またはその上方空間で、審判員またはプレーヤーの身体、あるいは、地面以外のものに触れたもの。

 ファウル飛球は、ボールとファウルライン(ファウルポールを含む)との、相互の位置によって判定しなければならない。 野手がボールに触れたときに、フェア地域にいたか、ファウル地域にいたかによって判定してはならない。

今回の場合に即して考えると、審判員は、野手が打球に触れたときの打球の位置でフェアかファウルかを判定します。

上の図のとおり、ファウル飛球は、ボールとファウルラインとの位置関係で判定します。触れたグラブの全部がファウルテリトリーにあっても、触れた瞬間の打球の位置がフェアテリトリーにわずかでもかかっていれば「フェア」と判定します。

そのため、野手が打球をはじいて、ファウルグラウンド側に落として「ファウル」にする、というのは、主張している人がルールを誤って理解している可能性があるように思われます。

さて、野手がどの位置で打球に触れたかは、NHKの中継映像でも、外野席からの撮影映像でも分かりません。これ以外の角度からの映像を見つけることはできませんでした。

よって、私は、この打球がフェアであるという根拠を中継映像から見出すことができないので、もしリプレイ検証する立場にあるならば「Stands - 判定維持」と判断します。

なお、繰り返しになりますが、一塁塁審の木村さんは外野手がダイブする前に一塁線上に立っていて、この映像を撮っている角度よりもはるかに良い位置取りで判定しています。

これだけよい位置取りをしているので、私は木村さんの判定には説得力があると思います。

走者は外野手が触れた瞬間から離塁可能?

以下のような主張もいくつか目にしましたが、これも間違いです。

審判のフェア/ファウルの宣告は実は関係なくてグラブに球が触れた時点でタッチアップ権が発生するので審判のファウル宣告が出ても3塁ランナーは進塁してホーム踏んでたらサヨナラだったみたい

 

打球の判定がファウルボールの場合、走者は進塁できません。

公認野球規則5.06(c) ボールデッド
 次の場合にはボールデッドとなり、走者は1個の進塁が許されるか、または帰塁する。その間に走者はアウトにされることはない。
(5) ファウルボールが捕球されなかった場合──各走者は戻る。
 球審は塁上の走者が、元の塁にリタッチするまで、ボールインプレイの状態にしてはならない。

ルールをどう勘違いしているかというと、次のルールを誤解した可能性があると考えます。

公認野球規則5.09(a) 打者アウト
 打者は、次の場合、アウトとなる。
(1) フェア飛球またはファウル飛球(ファウルチップを除く)が、野手に正規に捕らえられた場合。

【原注2】 野手がボールを地面に触れる前に捕らえれば、正規の捕球となる。その間、ジャッグルしたり、あるいは他の野手に触れることがあってもさしつかえない。
 走者は、最初の野手が飛球に触れた瞬間から、塁を離れてさしつかえない。

このルールから、走者はファウル飛球であっても「捕球」されれば判定はアウトでボールインプレイの状態が続くので、走者はタッグアップして離塁することが可能となります。

また、打球が「フェア」で確定していれば、野手が完全捕球できていなくても、野手が最初に飛球に触れた瞬間から、離塁することが認められます。

しかし、審判員が「ファウルボール」と宣告した場合は、その時点でボールデッドであり、走者は進塁が認められません。三塁走者が本塁を踏んでも得点は認められず、球審は、全ての走者が帰塁したことを確認してからプレイを再開します。

まとめ

  • 映像を確認する限り、打球が落ちた位置はファウルライン上ではなく、明らかにファウルグラウンドです。
  • ただし、その前に外野手のグラブに打球が触れていた可能性が高いです。
  • その場合、外野手のグラブに打球が触れたときの「打球の位置」でフェアかファウルかが確定しますが、映像ではどちらであるかを確認することはできません。
  • 一塁塁審は打球判定時に一塁線上に立っていて、良い位置取りができています。私は一塁塁審の判定には説得力があると思います。
  • 打球の判定がファウルボールの場合、走者は進塁できないので、三塁走者がタッグアップして本塁を踏んでも得点は認められません。