
今回は、2025年7月2日、ソフトバンクvs日本ハムの9回裏に起こった本塁クロスプレイ(サヨナラ)に関するリプレイ検証について取り上げます。なぜ判定がアウトからセーフに覆ったのか、私なりの視点から解説します。
ルールブックなどに基づいた解説を心掛けますが、一部私見が入りますので、ご容赦ください。
まずはプレイを見てみましょう
0-1とソフトバンクが1点を追う9回裏、一死一・三塁から山川穂高のレフトへフェンス直撃の長打を放ちました。三塁走者に続き、一塁走者の緒方も本塁に突入します。
一度は本塁クロスプレイでアウトが宣告されましたが、リプレイ検証の結果、判定はセーフに変更。ソフトバンクのサヨナラ勝ちとなりました。
なぜ判定がアウトからセーフに覆ったのか
リプレイ検証のルール
当ブログではリクエスト制度のルールをこちらの記事にまとめています。
本件に関して重要となる事項だけ抜き出すと、次のようになります。
- リプレイ検証は、当該審判員を除く審判員2名、控え審判員の計3名が行い、支持の多い意見を優先する
- リプレイ検証中、判定を下した当該審判員以外の1名の審判員がグラウンド上に残り、この間、選手はベンチに戻ってはならない
- 審判員がリプレイ検証に用いる映像は、当該試合のテレビ中継映像
- リプレイ映像の検証時間は5分以内
- 確証のある映像がない場合は審判団の判断
「確証がない映像」とは、
- グラウンドの土などでタッグやベースへの走者の足の入りが確認出来ない。
- プレイがその他のプレーヤー、または審判員でブラインドになっている。
- 映像自体がぶれている。
- 検証後の判定に抗議した場合、抗議した選手と監督は退場処分
緒方のホーム触塁のほうが先だった?
捕手がヘルメットのあたりに触球できているのは間違いないので、触球した瞬間と本塁触塁のどちらが先かがポイントです。

パ・リーグTVのハイライト映像には3Dの自由視点映像も含まれていたので繰り返し見たのですが、一塁走者の緒方選手がスライディングした勢いで、手の周りに土ぼこりが舞い上がっていて、本塁に触れた瞬間がどの時点なのかを確認することができません。

リプレイ検証結果の3つの選択肢
MLBのアンパイアリングについて解説している「Close Call Sports」の説明が分かりやすいので引用すると、リプレイ検証結果には、3つの選択肢があります。

AJ Hinch Ejected After Call Stands on Extra Inning Safe Call Due to Parallax Effect[CloseCallSports]
- Confirmed - 確認済
判定が正しいことを示す、はっきりとした明白な証拠が確認できた - Stands - 維持
判定が正しいことの確認または覆すことのできる、はっきりとした明白な証拠が見つからない - Overturned - 変更
判定が誤っていることを示す、はっきりとした明白な証拠が確認できた
以上から、私はこのリプレイ検証の映像からは、球審が判定したアウトが「はっきりとした、明確な間違い」であるとは言い切れないので、アウトの判定を「維持 (Stands)」と考えます。
しかし、実際のリプレイ検証では…
判定がセーフに覆ったので、リプレイ検証をした3名の審判員のうち少なくとも2名は、リプレイ映像を見て「緒方のホーム触塁のほうが先」と確認できたということだと受け止めます。
しかし、仮にそうだったとしても何を見て誰がそう判断したのかはよく分かりません。
元NPB審判員の坂井さんの説明によると、NPBのリクエスト制度の下では、リプレイ映像を確認する3人の審判員は、繰り返し確認したい映像があったとしても、自らの判断で止めたり戻したり、映像を選んだりすることができないそうです。そして、試合中継映像で流れているものを見て、3人が「せーの」で同時に自分が考える判定を行い、その多数の判断が判定として採用されるそうです。

【リクエスト制度】MLBとNPBの違いとは? 本質的な問題点は!? [審判のさかい]
リプレイ検証結果、最終判定の責任の所在を特定の審判員が背負わないようにすることで、審判員の負担を軽減させるようにしているのだと思いますが、その一方、判定の根拠が曖昧になり、「なぜこのような判定になったのか」を確認することが難しくなります。
ホームを思いっきり指したのはなに?
当日の責任審判員である一塁塁審の真鍋さんは、リプレイ検証の結果、本塁に向かってセーフを宣告し、本塁を指差しました。

これが何を意味するか分からなかったという反応をSNS上で見かけたので、これについても解説します。
本塁を指差すジェスチャーは、「ランスコア」つまり「得点」の宣告です。今回の場合、本塁がセーフということはソフトバンクのサヨナラ勝ちを意味することになるので、あえて「得点」も力強く宣告したのではないかと推察します。
まとめ
本来このプレイはアウトだったのかセーフだったのか、今回のリプレイ検証の映像には3Dの自由視点映像も含まれていましたが、それでも私にははっきりと明確には分かりませんでした。そのため、当初の判定を「維持」すべきではないかというのが、私の正直な印象です。
しかし、リプレイ検証をした3名の審判員のうち少なくとも2名は、リプレイ映像を見て「緒方のホーム触塁のほうが先」と判断したので、私が見落とした何かをもって判定を変更できる根拠が得られたのかもしれません。
本塁を指差すジェスチャーは「得点」が入ったこと意味し、「ランスコア」と宣告します。この機会に一緒に覚えてみてください。