numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【野球規則2026改正】ハイブリッドポジションとは何か ― ワインドアップ/セットポジションの定義から整理する

前回は、ハイブリッドポジション導入に至ったバウアー事件の経緯を振り返り、その背景を整理しました。

今回は、「そもそもハイブリッドポジションとは何なのか」を、ワインドアップポジション、セットポジションの定義と照らし合わせながら整理します。

※公認野球規則2026年改正の全体像については、別記事で整理しています。
公認野球規則2026改正まとめ

そもそも「ハイブリッドポジション」とは

公認野球規則において、投手が用いることのできる正規の投球姿勢には、「ワインドアップポジション」と「セットポジション」の2種類があります。

違う言い方をすれば、
公認野球規則上、投手が選択できる正規の投球姿勢はこの2種類しかありません。

では、ハイブリッドポジションとは何なのでしょう。

実は、「ワインドアップポジション」と「セットポジション」それぞれの定義を紐解くと、どちらとも解釈できてしまう投球姿勢が存在してしまいます。

そのようなどちらとも解釈できてしまう投球姿勢を、正式なルール用語ではなく、便宜的な呼び名で、「ハイブリッドポジション」と呼びます。

ワインドアップポジションの定義と要点
(※自由な足の位置に制限がない)

  • 投手は、打者に面して立つ。
  • 軸足は投手板に触れて置く。
  • 軸足でないほうの足(自由な足)の置き場には制限がない。投手板の上か、前方か、後方かまたは側方に置くことが許されている。
  • ボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。
  • 実際に投球するときには、自由な足(軸足でない足)を1歩後方に引き、さらに1歩前方に踏み出すこともできる。

セットポジションの定義と要点
(※完全な静止が求められる)

  • 投手は、打者に面して立つ。
  • 軸足を投手板に触れて置く。
  • 軸足でないほうの足(自由な足)を投手板の前方に置く。
  • ボールを両手で身体の前方に保持して、完全に動作を静止したとき、セットポジションをとったとみなされる。

足の置き方によっては、どちらとも取れてしまう!

右投げ投手がこのように足を置き、両手を体の前方で合わせて静止すれば、迷わずセットポジションをとったと判断されると思いますが……

 

次のように足を置いて、両手を体の前方で合わせた場合はどうでしょうか。

※自由な足は投手板の前方にあるが、まだ投球動作には入っていない状態

この姿勢で完全に静止して、そのまま自由な足を前に踏み出して投球すればセットポジションですが、このように、この姿勢から足を後方に一歩引くと……

(※先ほどの姿勢から自由な足を一歩引く)

ルール上は、ワインドアップポジションをとっているようにも解釈できてしまいます。

つまり足の置き方によっては、セットポジションともワインドアップポジションともとれる足の置き方が考えられることになります。

それでも、「塁に走者がいるとき、投手が投手板に軸足を並行に触れ、なおかつ自由な足を投手板の前方に置いた場合」には、セットポジションで投球するものとみなされるのが、従来の解釈でした。

【改正内容】ハイブリッドポジションのルール

改正後の規則5.07(a)(2)【原注】

(※前段略)
 塁に走者がいるときに、投手が投手板に軸足を並行に触れ、なおかつ自由な足を投手板の前方に置いた場合には、この投手はセットポジションで投球するものとみなされる。
 ただし、打者が打席に入る前に、投手がワインドアップポジションで投球する旨を審判員に伝えた場合には、前述のような投球姿勢であったとしても、ワインドアップポジションとして投球することができる。
 投手は、打者が打撃中であっても、(i)攻撃側チームにプレーヤーの交代があったとき、または(ii)走者の位置が変わったときは、次の投球を行なう前であれば、審判員にワインドアップポジションで投球する旨を伝えることができる。

【注6】ワインドアップポジションとして投球する旨を審判員に伝えた後であっても、攻撃側チームのプレーヤーが交代したり、走者の位置が変われば、セットポジションに戻すことができる。
【注7】アマチュア野球では、セットポジションに戻すときも、審判員にセットポジションで投球する旨を伝えなければならない。

赤字の部分が野球規則2026改正で追加された内容です。

  • 打者が打席に入る前 または、
  • 攻撃側チームにプレーヤーの交代があったとき または、
  • 走者の位置が変わったとき

で、次の投球を行う前に

  • 投手が審判員に「ワインドアップポジションで投球する」と通告する

ことで、「塁に走者がいるとき、投手が投手板に軸足を並行に触れ、なおかつ自由な足を投手板の前方に置いた場合」であっても、ワインドアップポジションとして投球することができるようになりました。

したがって、この姿勢から実際に投球するとき、自由な足(軸足でない足)を1歩後方に引き、さらに1歩前方に踏み出すこともできます。

まとめ

ハイブリッドポジションとは、「塁に走者がいるとき、投手が投手板に軸足を並行に触れ、なおかつ自由な足を投手板の前方に置いた」投球姿勢です。

基本的には審判員は、この姿勢から投球する場合はセットポジションとみなしますが、投手が審判員に「ワインドアップポジションで投球する」と通告することで、ワインドアップポジションとして投球することができます。

この改正によって、「足の置き方」のみではなく「事前の通告」によって「投球動作の選択」ができることが、明確に整理されました。


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※ハイブリッドポジションは、公認野球規則2026年改正の一項目です。
改正全体については、以下の記事で整理しています。
公認野球規則2026改正まとめ