
今回は2025年3月29日、明治安田J1リーグ第7節 京都vs広島50分のシーンを取り上げます。
ペナルティーエリア内で守備側競技者の手にボールが触れましたが判定はノーハンド。それがなぜなのかについて解説します。ハンドの反則の見極めは、本当に難しいです。
どんなシーン?
2025明治安田J1リーグ第7節、京都vs広島50分のシーンです。
左サイドからペナルティーエリア内にパスが通った広島は、田中からゴール前にクロスボールを入れますが、中野が合わせられず、ボールはバウンド。その直後、クロスボールを競ろうとした佐藤の右腕にボールが触れました。しかし、主審はハンドの反則を取りませんでした。

手や腕にボールが触れることのすべてが、反則になるわけではない
2025明治安田J1リーグ第1節、神戸vs浦和81分のシーンの解説でも書きましたが、どうだったらハンドの反則になるのかについては、サッカー競技規則の第12条「ファウルと不正行為」に記載があります。
サッカー競技規則第12条 ファウルと不正行為
競技規則の記載の仕方がやや難解なので、要点をまとめて整理し直すと、こうなります。
ハンドの反則の要点(num整理)
(大前提)ボールを手や腕で扱うと、反則です。
- 具体的には、競技者が次のことを行うと、反則です。
- 例えば手や腕をボールの方向に動かし、意図的に手や腕でボールに触れる。
- 手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる。
- 相手チームのゴールに、たとえ偶発的でも
- 自分の手や腕から直接得点する。
- ボールが自分の手や腕に触れた直後に得点する。
(基準)ハンドの反則を判定するにあたり、腕の上限は、脇の下の最も奥の位置までのところとする。
今回の場合は……
確かに、佐藤響選手の右腕にボールは触れています。しかしその直前、クロスボールが目の前でバウンドし、意図せずボールが右腕の方に飛んできました。


このとき、佐藤選手はボールに当たる前から右腕を後方に引いています。
よって、先ほどの1.と3.
- 例えば手や腕をボールの方向に動かし、意図的に手や腕でボールに触れる
- 相手チームのゴールに、たとえ偶発的でも得点している
は該当しません。また、
- 手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる。
に該当するかどうかですが、想像するに主審は、「佐藤選手はボールが手前でバウンドしたことで、とっさに腕を引いて、ボールに腕が触れないように配慮した」と判断したと推測します。
このようなことから、主審はノーハンドと判定し、ホイッスルを吹きませんでした。
VARは介入しないの?
今回、佐藤選手のクリアボールがタッチラインを割ってから、広島のスローインで試合再開とする主審の指示のホイッスルがすぐに吹かれたことで、「VARがプレーを確認していないのではないか?」という不満をもった広島サポーターの反応がX上で目につきました。
ペナルティーエリア内で守備側競技者の腕にボールが触れた事象ですから、VARは当然確認しています。通常、主審から指示を受けなくても、「Possible PK」としてハンドの反則があったかどうかを映像で確認します。
ただし、VARは全ての判定で厳密な正確さを追求するのが任務ではなく、主審の判定に「はっきりとした、明白な間違い」や「見逃された重大な事象」があったときに介入する役割です。
これは推測ですが、ボールが佐藤選手の手に当たったときの一連の流れの中で、主審とVARが交信して、判定の理由を伝えていたかもしれません。例えば主審が「腕に当たったのは見えているが、佐藤選手は腕を引いて当たらないように配慮していた」などと説明していたかもしれません。
実際、ボールが自分の目の前でバウンドして腕に向かって飛んできたとき、選手はとっさに腕を引くでしょうが、完全に当たらないようにするのはなかなか難しいです。
そして、主審が説明した判定理由の内容に「はっきりとした、明白な間違い」があるといえる映像がなければ、VARは主審の判定をフォローします。
まとめ
手や腕にボールが触れることのすべてが、反則になるわけではありません。
具体的には、
- 手や腕をボールの方向に動かし、意図的に手や腕でボールに触れる
- 手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる
- 偶発的であっても、自分の手や腕から直接、またはボールが自分の手や腕に触れた直後に相手チームのゴールに得点する
とハンドの反則にあたりますが、今回はそのどれでもないと(少なくとも私は)考えます。
また、VARはペナルティーエリア内でのハンドの反則の可能性があるので当然映像を見て確認しますが、主審の判定に「はっきりとした、明白な間違い」や「見逃された重大な事象」があったとは言えないとして、介入には至らなかったと推測します。
