
今回は、2025年10月4日、明治安田J1リーグ第34節 横浜FMvs浦和戦の、3点目につながるPKの判定に関連して2つの事象を取り上げます。「キーパーチャージ」ではなくキーパーへのチャージと、「オフサイド」のルールについて、このプレーを通して確認していましょう。
まずはプレーを見てみましょう
横浜FMvs浦和 42分のシーンです。
クルークスがFKからPA内にボールを上げ、GK牲川がキャッチしようとしてファンブル。ボールは角田の頭に触れてこぼれ、キニョーネスがこのボールに競った直後に石原がキニョーネスの足を蹴ってしまい、キニョーネスが倒れて主審はファウルでPKと判定しました。
「キーパーチャージ」?
Xを見ていると、浦和サポーターの投稿の中には、GK牲川がボールをキャッチしようとしたときに角田が接触したことを「キーパーチャージ」と主張するものが見られます。
キーパーチャージは??なんでPKなの#浦和レッズ #urawareds pic.twitter.com/skluJL4D7B
— さいたまさん (@bay__saitama) 2025年10月18日
キーパーチャージとは?
1997年のルール改正で廃止されたルールです。だからもうかれこれ30年近く前に廃止されたルールです。
ざっくり言うと、ゴールエリア内でボールを持っていないゴールキーパーに対してチャージ(肩で相手の肩あたりに当たっていくプレー)をした場合は、正当なチャージであっても間接フリーキックとするというルールです。
1997年以降、キーパーチャージというルールは廃止され、ゴールキーパーもフィールドプレーヤーの一人として扱われるようになり、他のフィールドプレーヤーがヘディングの競り合いでヘディングしようとしながら相手にチャージできることと同様に、ゴールキーパーに対しても正当な競り合いを保障することになりました。
廃止されたルールなのに主張する人がいるのはなぜ?
30年近く前に廃止されたルールなのにいまだに「キーパーチャージ」という用語が飛び交うのには、私は2つの理由があると思っています。
1つは、DAZNや地上波などの中継において、特に解説者や実況などが、廃止されていることを知らずに喋っているから。公共の電波で誤解を広げ、かつ「キーパーチャージ」を受けた側のサポーターが(往々にしてその直後にPKや得点を取られていて)主審の(正しい)判定に対して不満を口にするときに「解説の○○さんがキーパーチャージって言っていた、誤審だ」などと叫ぶことでさらに誤解を拡散する状況になっているのだと思います。
もう1つは、「キーパーチャージ」という用語の手軽さです。「ゴールキーパーに対してチャージすること」を「キーパーチャージ」と簡単に言えてしまうので、サッカーのある事象を指した用語としてのみ、強い生命力で残り続けてしまっているのではないかと考えます。そこに前述の誤解が加わることで、強い主張になってしまっているのではないかと考えています。
……というわけで、「キーパーチャージ」というルールはもう30年近く前に廃止されています。角田はゴールキーパーにチャージしましたが、ボールにプレーしようとする正当なものなので、プレー自体はファウルではありません。
キニョーネスはオフサイドポジション?
横浜FMのPKとなるファウルを受けたキニョーネスの位置がオフサイドポジションだったのではないかという主張が見られます。
キニョーネスのPKの判定の場面、よく確認すると角田に当たってオフサイドポジションのキニョに渡ってるからオフサイドだね🤔 https://t.co/zP1jZdAjl2
— ニケ🇫🇷 (@2ktwi) 2025年10月18日
オフサイドのルールを競技規則で確認していきましょう。
まずはオフサイドポジションとは何かからです。
サッカー競技規則2025/26 第11条 オフサイド
オフサイドポジションにいることは、反則ではない。
競技者は、次の場合、オフサイドポジションにいることになる。
・頭、胴体もしくは足の一部でも、相手競技者のハーフ内にある(ハーフウェーラインを除く)。そして、
・競技者の頭、胴体もしくは足の一部でも、ボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手競技者のゴールラインに近い位置にある。ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた*瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっている場合にのみ罰せられる。
*ボールを「プレーした」か「触れた」最初のコンタクトポイントを用いるべきである; しかしながら、ゴールキーパーがボールを投げたときは、最後のコンタクトポイントを用いるべきである。
攻撃側競技者のオフサイドポジションを判断する瞬間は、味方競技者がボールにプレーしたか触れた瞬間ですから角田の頭にボールに触れたときに判断します。
角田にボールが触れた瞬間のキニョーネスの位置は、ゴールライン付近まで上がっていて、明らかにオフサイドポジションです。

そして、オフサイドの反則は、オフサイドポジションにいる選手が次のことに該当した場合に適用されます。
ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた*瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっている場合にのみ罰せられる。
- 味方競技者がパスした、もしくは触れたボールをプレーする、または触れることによってプレーを妨害する。または、
- 次のいずれかによって相手競技者を妨害する。
または、
- 明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレーする、もしくは、プレーする可能性を妨げる。または、
- ボールに向かうことで相手競技者にチャレンジする。または、
- 自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える。または、
- 相手競技者がボールをプレーする可能性に明らかに影響を与えるような明白な行動をとる。
- その位置にいることによって、次の場合に、ボールをプレーして利益を得る、または相手競技者を妨害する。
キニョーネスが先にボールにプレーしていますので、PKとなるファウルより先にオフサイドの反則が成立しました。
よって、このプレーの正しい判定はオフサイド。PKは誤審です。
VARは確認できなかったか?
判定がPKなのでVARは当然FKが蹴られる瞬間からPKの判定となるまでを確認しているはずですが、角田にボールが触れたことを見落とした可能性が考えられます。
言い方を変えると、キニョーネスがオフサイドポジションだったかどうかをFKの瞬間で確認していたのではないかと想像します。

まとめ
- キーパーチャージというルールは1997年に廃止。今回のような事象が起きるたびに蘇ってくるパワーワードですが、いい加減使わないようにしましょう。そのたびに誤解が広がります。
- オフサイドは確かに成立していました。よって、正しい判定はオフサイドで浦和の間接フリーキックで再開すべき事象でした。
私は浦和のサポーターなので、4-0で負けたことがショックではありますが、この検証記事は私情を挟んでいないことはご理解いただけるかと思います。
まぁ……確かに悔しいですね。