
今回は2025年3月2日、明治安田J1リーグ第4節、広島vs横浜FC63分のシーンを取り上げます。
相手のチャンスをファウルで潰す、タクティカルファウルと呼ばれる事象に関して、カードが出る基準について考えます。
まずはプレーを見てみましょう
2025明治安田J1リーグ第4節、広島vs横浜FC63分のシーンです。
ノーカード??
— サンフレッチェ北村 (@sanfrecce_kita) 2025年3月2日
ファール取ったのに?
突破したら決定機になりそうな場面でユニフォーム引っ張ってノーカード??
えっ??
清水さん、それで本当に合ってます? pic.twitter.com/4dkg2HBfHC
広島のGK大迫がクロスボールをパンチングでクリアし、こぼれ球を加藤が前線へフィード。ジャーメインが相手ディフェンスの裏に抜けるパスを出したところで、これに走りこもうとした中村を、ンドカが手を使って止めました。
主審の清水さんはファウルと判定して笛を吹きましたが、カードは出ませんでした。
DOGSOとは?SPAとは?
DOGSOとは、決定的な得点機会の阻止のこと。英語でDenying an Obvious Goal-Scoring Opportunityといい、その頭文字をとってDOGSOと略しています。
一般にDOGSOに当たる場合、ファウルをした選手は自動的に退場となります。
SPAとは、大きなチャンスとなる攻撃の妨害のこと。英語でStopping a Promising Attackといいます。
DOGSOにはならないものの大きなチャンスをファウルで止めた場合がこれに当たり、ファウルをした選手は自動的に警告となります。
DOGSOを判断するための4要件
ファウルがあったときに以下の4要件が揃っている場合、DOGSOと判定され、反則を犯した守備側競技者には自動的にレッドカードを提示されます。

① 反則とゴールとの距離
反則が起こった地点からゴールまでが「決定的な得点機会」と言えるほど近ければ該当します。ただし、競技規則に何mと示されているわけではありません。
② 全体的なプレーの方向
攻撃側の競技者がゴールに向かっていたかどうか。ゴール方向にプレーが向いていれば該当します。
③ ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
仮にこの反則がなかった場合に、反則を受けた攻撃側競技者がボールをキープできるか、またはコントロールできるかどうか。反則を受けた瞬間はキープまたはコントロールできていなくても、反則がなければ次の瞬間にはできるだろう(キープまたはコントロールできる"可能性"がある)とみれば該当します。
④ 守備側競技者の位置と数
他の守備側競技者がカバーに入ることができる位置関係にいるかどうか。カバーできるディフェンダーがおらず、ゴールキーパーと1対1になってしまう、もうあとはシュートを撃つだけ、のような状況であれば該当します。
今回の事象の場合は……?
ファウルがあったときの状況をDOGSOの4要件で確認してみましょう。

- ゴールまでの距離:△
- プレーの方向:◯
- ボールコントロール:▲
- 守備側競技者の位置と数:◎
ゴールまでの距離はまだあるものの、このファウルがなく、中村選手のディフェンスの裏に抜けていたら完全に独走状態。確かにGKと1対1の状況になった可能性はあります。
とはいえ、その状態になるまでにはンドカ選手との競り合いに勝たなければならず、ファウルが起こった瞬間、中村選手がボールを確実にキープできる状況であったとは言い切れません。
私はSPAと判断し、ンドカ選手にはイエローカードが提示されるところだったと考えます。清水主審はノーカードでしたが、ノーカードは適切ではないと思います。
なお、DOGSOには当たらないことから一発退場かどうかの事象ではないので、VARが介入する要件は満たしません。
APTの増加のためにDOGSOの基準も変わった?
……というような主張をする人をX上で見かけたのですが、これは完全に言いがかりです。
APT(Actual Playing Time =アクチュアル・プレーイング・タイム)を増やすのは、そもそも選手が無駄に時間を浪費することを防ぎ、90分間フルにサッカーの試合をすることを目的としているもので、サッカーが目指す方向性として私は賛成です。
その実例が、カタールワールドカップで話題になった、7分とか10分といった、やたらと長い(と感じた)アディショナルタイムです。
APTを長くするために審判員ができることは、例えば「ファウルをしっかりと見極めること」や「アドバンテージがとれるときは進んでとること」などであって、DOGSOやSPAを判断する基準はAPTとはまったく無関係です。
▼DOGSOやSPAについてはこちらでも解説しています。