numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

脳震盪による交代があったとき、相手チームの交代枠は?

できれば起こってほしくないことですが、接触プレーがつきもののサッカーでは、脳震盪によりプレー続行が困難になることがあります。

2024/25の競技規則改正で「脳震盪の疑いによる交代ルール」が導入され、このブログでも2024年6月に一度このルールについて解説をしました。

num-11235.hateblo.jp

今回は、脳震盪による交代が起こったときの、対戦チームの交代枠について、2025年4月20日J1リーグ 浦和vs横浜FMの事例をもとに解説します。

開始10秒で脳震盪のアクシデント

この試合で試合開始10秒、横浜FM宮市亮が浦和の長沼洋一と競り合った際、脳震盪を起こした疑いで交代となりました。

sakanowa.jp

選手が脳震盪により交代となる場合は、「脳振盪による交代(再出場なし)」の追加:実施手順に基づいて対応することになります。

進め方

  •  「脳振盪による交代」は、次により行うことができる。
    • 脳振盪を受傷した、または、その疑いが生じた直後に
    • フィールド上での診断、またはフィールド外での診断後に
    • 競技者が、その時より前に診断を受け、競技のフィールドに戻った場合を含め、それ以外で脳振盪を受傷した、または疑われるときはいつでも
  • チームが「脳振盪による交代」を行うこととした場合、できることならば異なる色の交代カードまたは用紙を用いて、主審/第4の審判員に知らせる。 

異なる色の交代カードとは、石川県社会人サッカー連盟によると、このような色の違う2色の交代カードを使うようです。ピンクが脳震盪による交代を行うチーム用、黄色が相手チームの追加交代枠用です。

脳震盪による交代があったときの当該チームの交代枠は……

開始10秒での交代となりましたが、「脳振盪による交代」は、「通常の交代」の回数の制限とは別に取り扱われます。すなわち、横浜FMは通常の5人の交代枠、ハーフタイムを除いて3回の交代回数を使用することなく、1試合において最大1人の「脳振盪による交代」を使って交代することが認められます。

相手チームの交代枠はどうなる?

このとき相手チームには、(脳振盪に限らず)いかなる理由であっても「追加の交代要員」を1人、3回の交代回数とは別に使うことができるようになります。

交代の回数

  • 「脳振盪による交代」は、「通常の交代」の回数の制限とは別に取り扱われる。
    しかしながら、チームが「脳振盪による交代」を「通常の交代」に合わせて行った場合、1回の「通常の交代」としてカウントされる。
  • チームが「通常の交代」の回数を全て使い切ってしまったならば、「通常の交代」のために「脳振盪による交代」の枠を使うことはできない。
  • チームが「脳振盪の交代」を行った場合、相手チームは1人の「追加の交代要員」を使うことができ、1回の「追加の交代」の機会を得る。この追加の交代回数は、「追加の交代要員」のためにのみ使うことができ、「通常の交代要員」には使うことができない。 

上記引用部分で太字下線にしたところがルールのポイントになります。

実例で確認!

Jリーグデータサイトに掲載の公式記録で確認してみると、このように掲載されています。

交代欄を見ると、左側の浦和は、64分、75分、83分、90分の4回で、6名の交代をしています。ここで注目してほしいのが備考欄です。

75' 浦和 13 渡邊 凌磨→14 関根 貴大 は相手チーム脳振盪交代による追加交代枠として扱う

75分の交代は追加交代枠。つまり、「交代回数」の欄を設けて整理し直すと、次の表のようになります。

時間

交代回数

交代内容

64分

1回目

金子 拓郎 → 松本 泰志

マテウス サヴィオ → 原口 元気

75分

追加交代枠

渡邊 凌磨 → 関根 貴大

83分

2回目

松尾 佑介 → 二田 理央

90分

3回目

長沼 洋一 → 大久保 智明

安居 海渡 → 荻原 拓也

よって、通常の交代回数3回で5人と追加交代枠で1人の交代が行われており、競技規則に基づいた適切な手続きになっています。

交代カードの運用を間違えると、6人交代が認められないことも

竹内 達也記者の指摘のとおり、最後まで追加交代枠を残したままにしていた場合、このようなことになってしまって、90分の最後の交代の2枚替えが認められなくなります。

時間

交代回数

交代内容

64分

1回目

金子 拓郎 → 松本 泰志

マテウス サヴィオ → 原口 元気

75分

2回目

渡邊 凌磨 → 関根 貴大

83分

3回目

松尾 佑介 → 二田 理央

90分

追加交代枠

長沼 洋一 → 大久保 智明

安居 海渡 → 荻原 拓也

 

実際、2024年9月18日のJ3リーグ 大宮vs北九州の試合では、まさに例示のような「4回目の交代での2枚替え」を審判団が認めてしまった「競技規則の適用ミス」が起こりました。

www.jleague.jp

実際にこの試合で行われた交代記録はこのようになっています。

時間

交代回数

交代内容

68分

1回目

杉本 健勇 → 和田 拓也

75分

2回目

石川 俊輝 → 大澤 朋也

泉 柊椰 → 関口 凱心

81分

3回目

オリオラ サンデー → ファビアン ゴンザレス

90+4分

追加交代枠

アルトゥール シルバ → 中野 克哉

茂木 力也 → 知念 哲矢

もうお分かりのとおり、68分の1回目の交代を追加交代枠として行っていれば、6人の交代は競技規則に基づいた適切な手続きになります。チームとしては競技規則を正しく理解していれば防げるミスですし、審判団も競技規則に則って正しく運用していくべきところでした。

脳震盪による交代が起こったときの交代カードの運用方法のセオリーは、

最初の1枚替えの時に「追加交代枠」のカードをさっさと使い切ってしまう

ということです。